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エスキモーロール(4) カヤックファースト

 カヤックに乗らずに、水面に浮かべてみましょう。そして、傾けて手を離すと・・・。元に戻りますよね。90度近くまで傾けても、勝手に元に戻ります。つまり、人間が何かしようとしなくても、カヤックは自ら起きようとする力を生まれながらにして持っているのです。しかし、ある角度を越えると、カヤックはひっくり返ります。つまり、起き上がる力を発揮できなくなる角度もまた存在します。当然っちゃ当然ですけどね。


 カヤックに乗って沈した状態(カヤックがひっくり返った状態)で私たちがするべきことは、カヤックが自ら起きる意欲を燃やす角度まで、カヤックを起こしてあげること、それだけです。私たちが我先にと起きようとすると、カヤックはカヤッカーを沈めようとします。なぜって、われさきに起きようとする運動(いわゆる、頭が先に上がる状態ですね)は、カヤックを倒そうとする運動と同じだから。ここ試験に出ます!?

 ロール練習の手伝いをしたことがあればわかると思いますが、ロールを失敗した人(練習者)を補助者が起こしてあげるときに、カヤックを持って起こそうとすると、非常に重いんですよね。それはなぜかというと、練習者が、呼吸するために頭をあげているからです。ここで、練習者にちょっとがまんをお願いして、一旦頭を水中に戻して、そして足・腰の力を抜いてもらいましょう。すると、カヤックは軽く起こせます。一旦カヤックを起こせば、補助者はカヤックをささえているだけで、練習者はカヤックの上に戻ることができるもんです。

 なぜ重かったか、それは、練習者が頭をあげることによって、カヤックを倒そうとする方向に力がかかっているから。どういうことかって説明しにくいので想像して補完してくださいね。右から上がるロールを例にとります。頭を起こそうとすると左の脇腹の筋肉が縮みますよね。左の脇腹の筋肉が縮むってことは、あれ?右にリーンするのと同じじゃないですか?つまり体は起きようとしているのに、一方で艇をひっくり返す方向に動いているんです。しかも体重をかけて!

 そりゃ持ちにくい持ち方でカヤックを起こそうとしているのに、体重をかけてカヤックを倒そうとされたら補助者もなかなかかないません。そこで、補助者には一旦沈んでもらったのです。そうすることによって体重がかからなくなります。そして足腰の力を抜いてもらうことで、カヤックを起こさないようにロックされていた力が抜けたから、軽く起こせるようになるのです。

 ある日、ロール練習されているご夫婦を見かけました。旦那さんがロール練習をされてて、奥様が補助をされていて、奥様はおぼれそうな旦那さんを起こそうとするのに大変そうでした。このシチュエーション、よく見かけますよね?ご夫婦で練習されている様子はとっても微笑ましいのですが、奥様は大変そうです。

 そこで、補助者は、艇を持って起こそうとするのではなく、練習者の手をつかんであげるだけにしてみましょう。練習者は、手を持ってもらったら、それを支えにして自分でカヤックを起こしてみましょう。そして、持ってもらった手に力をかけずに艇を起こすにはどうすればいいか、考えてみましょう。手を持ってもらっていても、体と頭が水中にある間は、PFDも身に付けているわけで、かなりの浮力があります。体の持つ浮力を最大限に活かせたとき、持ってもらった手に力は殆どかからなくなります。その状態で、つま先・膝・腰をうまい具合に使ってカヤックを起こす。これこそがヒップスナップです。頭を上げたときは左の脇腹を縮めました。これって右にリーンするのと同じでしたよね。逆に、右の脇腹を縮めると、艇を起こす方向に力が働きます。こうすることで、補助者は補助が大変楽になり、そして練習者はヒップスナップがなんたるかがわかる、と、こういうストーリーです。

 それができるようになってくれば、補助者なしでも、手を持ってもらう代わりにPFDやパドルフロートを使って一人で練習できます。そのうちPFDやパドルフロートがパドルになれば、ロールが完成。パドルが手のひらになれば、ハンドロールの完成、手のひらが頭になれば・・・と、続いていくわけです。

 PFDやパドルフロートでは起き上がれるようになったとしても、パドルだと起き上がれなかったりします。これは、パドルは手で動かすものというイメージができてしまっていて、浮力を感じることを忘れてパドルで起きようとすることが原因じゃないかと思います。パドルと腕を使って起きようとすれば、体を起こそうとする動きになります。体を起こそうとする動きは、カヤックを倒す力でしたよね?パドルと上半身を一体にして、浮力を感じて、そしてパドルのブレードに受ける水圧までも利用してカヤックを先に起こすことができれば、ロールは完成するでしょう。

 ロールするときは、カヤックファーストで。われさきに、では、カヤックから猛反発をくらいます。

 

 次回(いつ??)は、カヤックの下ではカヤックを起こせないというあたりの話でも。そのうち図を入れたいなぁ・・・。

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コメント

  1. fusai より:

    ジャストミーーーーート!なお話。ありがとうございます。なるほどなるほどーー。ますますロール熱が上がりそうです。

  2. quickturn。 より:

    ロール練習しているその場で言ってもなかなか伝わらないんです。だからそれを書いても、図がないとわからんやろうなぁと思ってましたが、どうなんですかね。

  3. fusai より:

    図解、希望!ーーーかな。
    お時間のある時にぜひぜひ。とは言えど多忙極まるquickさんですから、無理はされぬよう。めちゃくちゃ時間の空いた時で、結構でございますm(__)m

  4. quickturn より:

    やっぱり図が必要ですよね・・・
    図解がないのは多忙というより絵心の問題なんですけどね・・・ハハハ
    そのうち挑戦しますね。

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