• このエントリーをはてなブックマークに追加

エスキモーロール(13) スカリングロールII

 スカリングロールには、ロールの極意がたくさん詰まっています。前回から日が経ってしまったけれど、気にせず続けましょう。前回でスカリングとは何か?という点に迫ってみました。今回は、スカリングロールへの道パートIIってことで、スカリングブレイス、そしていよいよスカリングロールについてまたまたわかりにくく書いてみましょう。


 スカリングドローって言うんですかね、このスカリングを使った横移動。これをマスターすると、きっと艇が自由自在に左右に動くようになったことでしょう。発展として、滑らかに、ギクシャクと、ゆったりと、超高速で、ふり幅を短く、ふり幅を大きく、など、大げさなストロークも試してみてください。

 さて、このスカリングを水中で空に向かって行うと、今まで横移動に使われていた推進力が、今度は浮力になるわけですね。それを利用したのがスカリングブレイスです。まぁフツウは水面でばしゃばしゃやって終わりでしょうが、それだけじゃモッタイナイ。

 例によってイメージ映像です。どうせヘタクソですよ。でもいいんです。あなたがきっと心の中できちんと整えてくれるはずですから。この絵ではイメージだけ掴んでください。手が変な動きをしているとか、頭の位置がおかしいとか、縮尺が、とか、そんなことはおかまいなしです。もう、現実に近づけるために苦労するのはやめました(それでいいのか?)。もっと図示したかったんですが、力が及びませんでした。ちなみにこの図ではリバーカヤックですが、シーカヤックでも同じです。ひとつだけ注意すべきは、この図では右手が伸びていますが、力を抜いて肘は直角くらいに曲げておいた方がいいです。静水練習中は問題ないでしょうけど、実戦では肩壊します。

 この姿勢を実現するために、少しずつステップを踏んで行きましょう。まずは、スターンに頭がつくくらいに寝そべって下さい。大抵、「寝てください」って言うと、始めは体が硬直して、あごを引いて頭を持ち上げようとするみたいです。力を抜いて、あごは伸ばして、頭頂部がカヤックのスターンデッキに着くくらいにしてみましょう。リラーックスリラーックス。晴れていたら、空には青空が見えますよね。真っ青な青空ですか?雨が降っていたら、雨粒が自分に降り注ぐのが見えるかも。エディの中だったら岸の新緑が見えるかもしれませんね。全身の力を抜いていいんです。力みがちですから気をつけて。スターンデッキの厚みがあるカヤックだと、背中が当たってこの姿勢にするのは無理でしょう。そういうカヤックでもスカリングブレイスはできますが、スターンデッキの薄いカヤックでコツを掴んでからの方が上達は早いかもしれませんね。

スカリングによる浮力

 そして、次のステップ。まずは右からいきますか、顔だけ右を向きます。右の水面を見てみましょう。そして右手は艇の右の先のほうに延ばします。左手は肘を曲げて顔の近くでパドルを保持します。その状態で、右のブレードを水面に這わせてみましょう。ちょうど、スカリングの推進力が空に向くようにスカリングをします。8の字じゃない、水平に動かすスカリングを水面で行います。体はまだスターンデッキの上です。ゆっくりパドルを動かすと、パドルは浮いてきますよね。浮いてくることを実感したら、パドルの動きを止めて少し沈めてみて下さい。少し沈んだ状態からスカリングをすると、また浮いてきます。スカリングによって浮力を生み出しているということを、まずは実感して下さい。浮いてこなかったら、ブレードの角度を確認してください。適切な角度でスカリングをしていれば、パドルを沈めようと思っても沈めることができなくなります。腕の力はしっかり抜いて、右手のグリップを緩めましょう。指先だけでパドルを押したり引いたりするような感じで十分です。

頭・体・PFDの浮力

 浮力を十分に感じられるようになったら、次のステップです。今、スターンデッキの上にある体を、徐々に右の水面へ落としていって下さい。胸は空を向いていますよね?そのまま胸が空を向いたまま、恐がらず、頭をあげようとしないで体を落とします。顔はまずは空を向いておきましょう。そうすれば、呼吸はできます。体を水の中へ落とし込み、PFDの浮力を感じてください。頭も水中に落とし、頭の浮力を感じてください。アルキメデスの法則を思い出し、体や頭を沈めるほど浮力があることを実感してください。また逆に、頭を起こしてみてください。頭を水面から出そうと首に力を入れると、浮力を失うことを実感して下さい。重いと思ったら、首の力を緩めて。あ、力は全くいらないんだ、って思えたらOKです。

 そのまま、息を止めて顔を水中に向けてください。苦しくなったらまた空を見て息継ぎすればいいだけのことです。スカリングを続けて、水中を眺めてみてください。魚が見えるかもしれません。水中に落としたカメラが見つかるかもしれません!?

 今、胸は空を向いていますよね?そしたら、胸をバウ方向に傾けてみましょう。傾けたらまた戻してみましょう。体の向きによる浮力の違いを体感して下さい。

艇の復元力

 さて、カヤック自体にも傾いたら戻ろうとする力がある、という話を以前したと思います。この力も最大限に使います。今までの状態だと、体が艇の右側にある分、艇が右に傾いていますよね。この傾いた艇を、できるだけ水平にしてみましょう。そうすると、艇が持つ復元力を強く使えるようになり、体が沈みにくくなります。

 頭や体はそのままの位置、つまり水面で十分に浮力を感じられるポイントに置いたままです。そのまま、スカリングを続けながら、左足はかかと方向に押し、右ひざは持ち上げる方向に起こします。そうすると、背中にコクピットのリムが当たりますよね。コクピットのリムが当たると、それ以上押し込めません。そしたらもうこの際おしりをシートから浮かせちゃったりしてもとりあえずいいと思います。それでスプレースカートが外れるようだったら、そのスカートはあまり使えないかも・・・。

 艇が水平になったような気がしてきたら、今度は逆、沈する方向に倒してみましょう。艇が垂直に近づくと、艇は体を沈めようとしてくるでしょう。しかし、スカリングをしているし、頭と体の浮力もあるし、そう簡単には体は沈まないでしょう。こうやって、艇の倒す角度を変える練習をしてみます。頭と体とパドルは同じところに維持し、艇の角度だけを変えます。素早く倒したり素早く起こしたり、はたまたゆっくり倒したりゆっくり起こしたりしてみましょう。スカリングを続けながら、バッタンバッタンと倒したり起こしたりしてみましょう。このとき、常に胸が空を向いていることに意識してください。

体を戻す

 スカリングを続けて、先ほどのようにカヤックを水平にします。そして、スカリングを続けながら、水中に沈めた体をスターンデッキに引き上げましょう。ゆっくりゆっくり引き上げましょう。その際、体の浮力を失いますので、とりあえず頭で浮力を稼いでおきます。体がスターンデッキに上がったら、頭を最後にそっとスターンデッキに上げてしまいます。

スカリングロール

 では今度は、スカリングを続けながら艇を完全に沈させてみてください。さすがに沈状態になると、胸を空に向けたままでは体の位置はバウ側に寄ってくるでしょう。ほら、ちょうどロールのセットみたいなもんですね。そこから、さっきみたいにスカリングを続けながら、またゆっくりゆっくり艇を起こしてみてください。ここはあえて、10ストロークくらいを使ってゆ~っくり艇を起こしてください。ゆっくり起こすのってなかなか難しいでしょう?でも、今まで段階を追ってやってきたらもうできるでしょうね。で、艇が起きたら、さきほどの要領で体をスターンデッキに上げます。はい、それがスカリングロールっていうやつですね。あれ?もうできちゃった?

 このスカリングロールの「ゆっくり加減」ってとても重要です。これを覚えると、ロールのための下半身の使い方がよくわかりますし、ロールして勢い余って反対側へ沈とかしなくなりますし、1ストロークのパワーで(艇じゃなく)体を起こしてしまうロールもしなくなります。パドルに頼らないロールがもっとはっきりわかるようになるでしょう。スカリングしてるんだからパドルに頼ってるじゃねぇかって思った?まぁやってみて。


余談ですが

 この「スカリング」というストロークはパドルのブレードと水の力学を体に覚え込ませるためにかなり重要なポイントだと思いますので、こればっかり一日中やってもいろいろ発見があると思います。サイドスリップやSターンストロークやCストロークも理解しやすくなると思います。

 このあと、パドルの動きを止めたら?パドルを持ってなかったら?etc・・・といろいろ続くわけですが、ここから先の発展形は私の範疇を超えるので、ここくらいにしておきます。今後は絵心を鍛えてちょっとずつ書き直していくことくらいでしょうか??脳内だけじゃなくて実際にロールできるようになったら、動画を撮って載せたいと思います。え?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

  1. mouji より:

     スカリングブレイスを教えてもらったおかげで,パドルと腕の一体感がわかったような気がしました!ロールまではいきませんが・・・。
     今回は,実際に教えてもらった通りだったので,よく理解できました。

  2. quickturn. より:

    >パドルと腕の一体感
    パドルと上体の一体感になるといいですね~

  3. mouji より:

    なるほど~。
    この夏の課題にいたします :smile:

  4. fusai より:

    体感・実感
    スモールステップで勉強していきます。
    読むと試したくなる本テキストです。う~!

  5. 杖ぱ より:

    最近、真ん中のパドルと一体感が薄れているのですが、どうしたら良いですカ?

  6. quickturn. より:

    moujiさん

    >この夏の
    年中した方がよいかと・・・

  7. quickturn. より:

    fusaiさん

    >う~!
    は~!

  8. quickturn. より:

    杖ぱさん

    超高速スカリングですネ

  9. けんと(^。^)y-。oO より:

    スカリングで浮いてるのは良いんだけど…スカリングロールのときは一度普通のロールのセットしないと、沈んじゃう(^^;
    これが今でも謎???

    セットして再び体を伸ばして…何の意味があるのやら???
    ってことでやっぱりロールはスィープ オンリーで今年も乗り切るのでしょう(^^;

  10. quickturn. より:

    >一度普通のロールのセットしないと
    セットすることによって体とパドルを水面近くに
    もってきてるんですよね?
    セットせずに沈んだ状態から水面近くに持ってこれたら
    いいんじゃないですか?

  11. けんと(^。^)y-。oO より:

    うまく言えないんですけど…セットすることによって、浮力何かは感じないから~(^^;
    セットすることによって…艇と体が一体化するって感じでしょうか???

    沈したままスカリングすると、パドルには浮力を持てても…上半身と下半身がバラバラで下半身は沈したままって感じでしょうか(笑)
    以前セットして、ボトムにタッチしてるって見たでしょう…。
    フィッティングのおかげで、ボトムを押さえる必要はなくなったけど…スカリングロールのときはセットすることでボトムを抑えるのと同じ状態みたい(^^;

    そそ もうバックロールのイメージは影も形もなくなりました(T^T)クゥー

  12. quickturn. より:

    あの船だったら沈したときの安定感が
    強いような気がしますね。
    だから、体の浮力を押さえ込む力が強いのかな??
    その分、中間を保つのが難しいでしょうけど、
    やってみるといろいろ見えることがあるかも
    しれませんね。
    それでも水中で体を右にやったり左にやったり
    してみると、浮力で傾くのが分かると思いますよ。

WordPress/Twitter/Facebookのアカウントも使えるようになりました。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください