地形図・コンパスの本
地形図の読み方・コンパスの使い方についての参考書。まだカヤックを知らず山ばかりだった昔によく勉強したものです。
え?昔?
・・・。
最近勉強してないなぁ・・・。
じゃ、まずこっちから。『道迷い遭難を防ぐ最新読図術』村越 真 著
著者は長い期間全日本オリエンテーリング大会を制覇してきたスペシャリストで、且つスポーツ心理学・認知心理学などに造詣が深い大学教授だそうで、なるほど確かにそういう心理的側面から実際的なコンパスの使い方に詳しい。ふつうにトレッキングを楽しむ分には、この一冊あればだいたい足りてしまうんじゃないかなぁ?
最初に、道迷い遭難が起きる要素を整理。実際に起きた遭難事故を例にあげ、わかりやすく説明している。
- 似ている地形にだまされた
- 分岐点を通り過ぎた
- そもそも地図が間違っている
- 地図は合っているけど読み間違えた
- 雪で登山道が見えない
- 霧で方向がわからない
- 巻いているうちに方角を誤った
全部書いているときりがないので詳しくは本を見て頂くとして。どうやら遭難というものは、ごくごく些細なミスから発生するようだ。気合とか心構えとか経験とかそんなの関係なし。人間はミスをする。人間だもの。ってやつ?
重要なのは、そのミスを取り返しがつくうちにさっさと修正してしまうことらしい。ところがやっかいなのは人間の心理というやつで、それがせっかくの修正の機会を見なかったことにしてしまう。
- せっかくここまで下って来たんだから・・・
- また登り返すのめんどくせー
- 多分こっちの方に降りていったら登山道に出るはず
とか、自分にとって都合のいい情報だけを選んでしまう。「都合のいい情報」っていうのは朗報っていうわけじゃなくて、自分にとってそっちだったらいいだろうなぁという情報のこと。実際には存在しないものを思い込んだり信じ込んでしまったりして、精神のバランスをとろうとでもするんでしょうかね。しらんけど。
さらにグループだとまた違った心理が働くらしい。
- リーダーがそう言うんだから大丈夫だろう
- みんな何も言わないから合ってるっしょ
- 間違っている気がするけど言うとリーダー怖いし
あとは、リーダーについていくだけだからっていうんでそもそも読図ができなくて、今どこにいるかわからないけどみんなについていけば大丈夫と思ってるとか。さらにリーダーの立場でも、いろいろあるだろう。
- みんながいる前で間違っているかもなんて言えない
- こんだけの人数に登り返してもらうなんて
- 今間違えたとバレたら帰ってから何といわれるか
- 俺はもう15年も山やってんだ、俺が間違ってるはずがない!
- お前らより俺の方が正しいに決まってるじゃないか!
などなど。読図はできて本当は気付いていたのに、そんな心理的なバイアスでもって論理的な根拠に耳を塞いでしまったり、ミスなんてしていない!と無理矢理なかったことにしてしまうとさらに事態を悪化させてしまう。
いませんか?人の過ちを責める人。間違えるのは心構えや気合や経験が足りないからだとか精神論で片付けようとしたりする人。プライドが高くて人の言うことを聞かない人。オレを批判するのか!?なんて逆ギレしちゃったりして。同じ状況で一人だったらセーフな場合でも、そんな人と一緒だと悪い結末が訪れるかもしれない?!
ちょっとのミスを認める度量、指摘できる雰囲気、むしろミスを知ってて黙っているのを咎める雰囲気、そんなのが、一人のときもみんなでいるときもあるといいですねぇ~。何か気付いたら遠慮なく言ってもらって、みんなの言うことをそれぞれが聞いて論理的に根拠があるかどうか、じっくり考えられるようなそういうグループだったらいいなぁ。なんて。ミスの多い僕はそうやって許しを請うか単独で行くしかないのですが・・・。
だんだん話がそれてきた。とりあえず、自分の位置を客観的に見て「あなたとは違うんです」と言えるように頑張らないといけないわけで。「ルートを外れる」そして「現在地がわからなくなる」その2段階から成る道迷いを防ぐための3つの技術、「現在地の確認方法」「ルートの維持方法」「道迷いの危険を回避するプランニングの方法」について説明していく。それらを実現するためのデバイスとして「地形図」「コンパス」があるのですな。
というわけで、まずは地形図とは?登山地図との違いは?から始まって、方角だけじゃないプレートコンパスの使い方。そしてそれらを使った上記3つの技術について。そして実践練習と続く。
・・・。長くなったのでこの辺で!
で、その地形図の読み方を中心に非常に詳しく書かれてあるのがこちら。『入門講座 2万5000分の1地図の読み方』平塚 晶人 著
こちらはわりと近年買ったやつ。もっと深く読めるようになりたいと思ったらこっちでしょう。最初の一冊でも別に悪くないです。脳にビシビシきますね。脳トレみたいなもんかも。
登山地図に慣れてしまうと、山を、尾根や谷ではなく、ピーク(頂上)と道で見るクセがついてしまう
「はじめに」にある言葉。ガーンときますね。ピークへと続く太い線で描かれた線を「見ながら」辿って歩いていくと、そりゃピークに到達するかもしれないけど、いつの間にか道から外れたとしてもそれに気付くことができない。尾根と谷で地形図を「読んで」歩いていけば、尾根沿いのはずの登山道なのに谷にいるはずがない、とすぐに間違いに気付くわけですな。
しかし著者はいう。
実は地形図を持つことのほんとうの意義は、そもそも最初から迷わないことにあるのです
なんと!ミスしたことに気付くようにっていうのも大事だけど、最初からどういう風に尾根と谷を越えていくか読み取れていれば、そもそも迷わないということなのですな。
「ほ~らみろ。道を間違える方がバカなんだよ。」とかいう声が聞こえてきそうだ。だけど僕の考えでは、「迷う」のと「道を間違える」のは違う。道を間違えたことに気付かず、いつの間にか全く違うところにいて、そしてそれに気付いたときにはどこにいるかわからなくなってしまう状態を「迷う」というのであって、すぐミスに気付いたり道はわからないけど現在地がわかる状態は「迷った」とは言わない(その前段階ではあるけれど)、と思う。
また話がそれそうなので戻して、この本では別冊地図帳がついている。実際の地形図が満載。それを横において、本文で指定されたとおり尾根や谷やピークを探し、そして山の姿を心に思い浮かべる。これでもかこれでもかというほど練習問題(?)をといていくことで、尾根とは何か、谷とは何か、ピークとは何か、わかるようになってくる。それらを地形図から繰り返し読み取っていくうちに、ごくごく小さな沢も地形図から読み取れることに気付く。山を歩いていて、登山道の横に少しひっこんだところを見つけては、おぉっ!このちっちゃい沢も地形図にあるじゃないか!!と感動することができる。ただ歩くだけじゃない山歩きのおもしろさ。
延々と半分くらいまできたところでやっと地図読みのテクニックに入るのだけど、「道はどういうところにつけられるのか」という「道の意図」なんて考えることもなかった。おもしろいなぁ~と思う。
この本で練習してみると、地形図から山の姿が見えるようになってくる気がする。でも、著者も言っているように、実際に山で地形図をどれだけ頻繁に見るかがポイント。どちらの著者も机上の空論ではなく実際に使ってきた人なので、実践的な地図の畳み方なんて項目まで記載されている。
ザックに入れてしまうと見る回数が減るし、道の分岐点にくるまで地図を見なかったり、結局最後山から降りてくるまで一度も開かなかったりするかもしれない。そんなんではいつまでたっても上達しない。地形図を読んで、次のチェックポイントまでいくつの谷といくつのピークを越えて、その途中で斜度がゆるくなって、なんてことを予め理解しておくと、もう全然迷わない。迷う方が難しい。いや間違えるかもしれんけど。いやまだ間違えるけどー・・・。
というわけで、どちらの本から始めてもオススメ。より深く知ることができるのは後者かなぁ。ちなみに僕は、前者が先でした。ていうか両著者の本も増えているようなので、もっといいのがあるかもしれません。
GPSだけあればとかそういう考え方もあるかもしれないけれど、地形図とコンパスで位置を特定したりするのって非常におもしろいゲームだったりパズルだったりするのでそれをやらないのもモッタイナイと思う。しっかり道がついているところでも、途中で立ち止まって「どこまで来たか?」を考えてみたりするのもおもしろい。確かここの分岐からいくつ小ピークを越えてきて○度の方角に○○山が見えるから・・・とか。そしてGPSで答え合わせ。なくてもいいけどあったらもっと楽しい・・・と、思います。
僕は最近めっきり山に入る回数も減ったしそもそも大して読図できるほうでもないし、難しいところに入ったらGPSとか頼りにしないとダメかもしれないなぁ。いや、もう進んで入ることはないだろうけど。
ついでに『ドキュメント 道迷い遭難』道迷いの心理に興味を持ったらコレ。実際に遭難した人たちのドキュメントで、みんな共通してぁあ紙面の都合でここまでっ。
コメント
>自分にとって都合のいい情報だけを選んでしまう
ク~^^;
リクエストに応えていただきありがとうございます。
早速、最初の本を注文してみます。
もう道に迷わないように頑張るぞ~
きっと地形図読みのおもしろさにハマると思います!!
夢中になって山に登るの忘れたりして!?ナイナイ