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トンボパドルとチョウパドル

パドル

 爆笑問題のニッポンの教養『飛行少年と呼ばれて』で、トンボとチョウの羽の違いについて触れられた。遠くへ飛ぶための細長い羽、花から花へ飛び回るための大きな羽。「生き様によって、それに見合う形をしている」と教授は語った(ツカーラさんに似てません??)。パドルも一緒なんだろうなぁ~と思った。


 Stop'n'go を繰り返す蝶には広いブレード。遠くへ漕いで行くトンボには細いブレード。トンボやチョウは全知全能の神が力学を駆使して創造したもの。パドルのブレードは(きっと)人間が失敗を重ねて作り出したもの。パドルの製作者がトンボとチョウを参考にしたのかどうか全く知らないけれど、パドル職人は神に近づいたのかもしれないなぁ~とかなんとか。

 なんだか自転車のギアとも通じるところがある気がする。自転車の漕ぎ方なんぞまったく考えずにじゃかじゃか乗ってたときは、重いギヤでガツーンと踏んで走れるようになるのがいいと思ってた。「上り坂を重いギヤで登ってるオレ(笑)」って感じで。ハズカシイ

 ところが、実はそれは大いに間違いらしく、そんな漕ぎ方では過剰な負荷がかかってしまって、運動を持続できずすぐに疲れてしまうらしい。疲れるだけじゃなく、間接や筋肉を壊してしまう原因にもなるそうな。

 自転車で特に長距離走る場合においては、軽いギアでしゃかしゃかとクランクを回し、登り下りなどの路面状況や速度に応じて「クランクの回転数が一定になるように」ギア比を変えていくのがいいらしい。

 実際、トンボとチョウの羽を動かす回数を比べてみると、トンボが30Hz程度(1秒間に30回羽ばたく)なのに対してチョウは10Hz程度だとか。トンボはローギアでしゃかしゃか動かしているわけだ。航続距離を稼ぐために細い羽を持ったトンボ、花から花へ飛んではとまるチョウ。生き様によって、それに見合う形をしていると。なるほど。

 シーカヤックは長距離を漕ぐので、細いパドルの方が疲れにくいとか。瞬発力はない替わりに体への負荷が少ないので疲れにくいんだと。スピードを上げるためには、回転数を早くすればいい。対してリバーカヤックなんかでは岩を避けたりエディの水を捕らえたり、はたまたバウを沈めたりするのに瞬間的に大きな力が必要になる。本流からエディへ、チョウが花から花へと飛び移るように、ってことかな。

 パドルの長さについてさらっと考えてみると、いくらブレードが細くても全体が長いとモーメントのうんたらかんたらで広いブレードのパドルと変わらないようになってしまうだろう。ほら、パドルのシャフトの持つところの幅を広くしてみると軽く漕げる感じがするでしょ?ロングロールの方が軽く上がるでしょ?それと同じ。多分長さは自転車のクランクの長さと同じように、体型に合わせるものなんだろうなぁ。座高や手の長さ・幅・等々、最適パドル長を数式にするときっとおもしろいだろう。しないけど。パドルメーカーが尺度として使っているのは身長だっけ?小さい人が長いパドルを使うと、大きなブレードのパドルを使うように体への負荷が心配になってくるんだろう。大きな人が長いパドルを使っても、両手の持つところの幅が広いし、パドルをてこに見立てたときのうんたらかんたらはちょうどよくなるんだろう。そういえば幅の広いカヤックだと長いブレードとかいうけど、ということは、あれって結構疲れるんじゃないだろうか。

 どのサイズのブレードを選ぶべきなのかは、きっと普段の巡航速度によって決まるだろう。ブレードのサイズが自転車や車のギアと同じ効果を持つらしいという仮定を深く考えもせず当てはめてみたりすると、スピードが速いのに細すぎるブレードはしゃかしゃか高回転で漕がなくてはならない。自転車でローギアで下り坂を下ると足の回転が追いつかないのと同じ。スピードが遅いのに大きすぎるブレードは体に負荷がかかる。自動車でハイギアで加速しようとするとノッキングを起こすのと同じ。スピードは船の性能と体力とよって変わってくるだろうから、それに合わせたサイズのブレードを選ぶのが望ましい、んじゃないかなぁ~。

 ということは、僕が今使っているシーカヤック用のパドルは広いブレードなのだが、つまりは「上り坂を重いギヤで登っているオレ(笑)」なのである。通常の巡航速度が速ければ問題ないのだろうが、常にマッタリ速度の僕にとってはやっぱり「上り坂を重いギアで登っているオレ(笑)」なのである。ハズカシイ。長距離を漕ごうという場合には、大いに間違いである。

 ではなんでいつも広いブレードを使っているのかって?それには軟弱な理由があってだね・・・。前に乗ってたポリのシーカヤックで、細めのブレードのパドルでロールがうまくできなくて悩んでた頃、ちょっと借りた広いブレードのパドルでは簡単にロールができてしまった。それ以来、広いブレードじゃないと、何だか不安を感じてしまうようになってしまった。手首を傷めてから、ベントシャフトのパドルを選ぶときも迷わず広いブレードにした。ロールしやすいカヤックに換えてからも、なんだか細いパドルではロールに失敗するんじゃないかというトラウマに付きまとわれて、ロングツーリングでもついつい広いブレードを使ってしまう。

 しかし広いブレードは、追い波を捕らえるべく急加速したりするにはちょうどいい。細いブレードだって、ようはローギアなので回転数を上げればスピードを上げられる。だから回転数で調整すればいいわけだけど。1日の間、どれだけ急加速が必要で、どれだけ長距離を漕ぐかによって、つまりその日の生き様によってトンボになったりチョウになったりすればいいんだろうなぁ。人間はトンボにもチョウにもなれるわけだから。

 という感じで妄想を繰り広げてきたのだが、海外のパドルメーカーのカタログを見ていると、"faster cadence" "casual cadence"などの言葉がでてきた。前者は広めのブレードのパドルで、後者は細めのブレードのパドルのところででてきた。あれ、おかしいねぇ。細いブレードはローギアなんだったらそっちがfasterであるべきなのに。というわけで、以上の妄想には問題がたくさんあるようだ。ダメじゃん。

 以下過去の妄想の遍歴

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