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宮尾登美子 天涯の花

天涯の花 (集英社文庫)

 宮尾登美子『天涯の花』。先日剣山を歩いたあと、教えて頂いて興味を持った。帰宅後早速注文し、やっと読み終わった。当然、読んだのは剣山を歩いたあとだけど、それもいいけど、まだ剣山に行ってない方は読んでおくと景色が違って見えるかもしれない。いや、行った後の方がいいかな?どっちも?読むときも、周辺の詳細地図を見ながら昔の道に思いを馳せるとまた違うかも。

 舞台は戦後の剣山。親を知らず養護施設で育った珠子が、ある日、老神主の養女として見ノ越の剣神社へ来ることになった。まだ見ノ越までも車道が開通していない時代。そこでの暮らしと珠子の葛藤を描くうんたらかんたら。

 先日剣山に行ったとき、往路はグーグル先生の言いつけを破って国道438号線を南下してなあ。酷道439号ほどじゃぁないが、とんでもなくぐねぐねした道で、結構苦労させられたんじゃわ。小説の舞台ではその道も開通しておらんようで、なんと珠子は貞光から川又までバスで行ってなあ、そこから徒歩で夫婦池を経て見ノ越へ歩いて行くんじゃ。

 一ノ森の雪崩の話も出てくるでなあ。そう、あの遭難碑のあったとこ。ほんでもなぜあんときあの遭難碑に吸い寄せられたのかはしらんけど、気になってのう。遭難捜索のゾンデ棒の使い方って、当時からそうだったのか、作者が著した現代の知識なのか、それも気になってのう。そしてその後通った行場の道。珠子がお月さんが地に下りてきたようというキレンゲショウマ。季節外れで花こそ目にすることはなかったけんど、キレンゲショウマの名前は柵の内側に書かれてあったのを目にしとった。なぜあんときトラバースしてあのルートを歩くことになったのかはしらんけど、気になってのう。なんだかそんなんで妙に感情移入してしもたんじゃ。どんくらいかというと、マインドルのブーツを履いたら遭難しても見つけてもらえそうな気がしてくるくらい。

 ともかく、これを読んだ今は、剣のお山さんに「さん」付けしたくなり、「お剣さん」の石段を数えたくなり、二礼二拍手一礼でお参りしたくなった。ほいでもこの前も下山報告ということで、なんでかきちんとザック下ろして帽子脱いで二礼二拍手一礼してしもたんじゃ。それから大剱神社の下の大岩の下に埋められているという安徳天皇の剣に思いを馳せたくなり、東祖谷の落合や栗枝渡を訪ねてみたくなった。今度は夏の日に剣のお山さんに行って、行場へ行ってあたり一面の「お月さんの色」を眺めてみたいし、お猿さんの木と亀の石を探してみたいと思うとんじゃ。

 最後はきよみ、きよみ!そっちじゃない!ってちょっと焦った。余韻が残るいい物語だった。フィクションなんだろうけど、祖谷に伝わる史実や伝説もたっぷり入ってるのだろう。剣山に行かない人も行った人もこれから行く人も、読むと「お山さん」の見方が変わってくるかも。

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