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シーカヤッキング―長距離カヤック航海の世界

シーカヤッキング―長距離カヤック航海の世界

 いろんな人に会って話を聞くといろんな人の名前が出てくるのですが、日本のシーカヤック界で有名とされている人のことは殆ど知らないことが多いのです。というわけで、ちっとは勉強してみようかしらと思い立ち、とりあえずよく見かける本を買ってみました。

 買って読んでみたんですけど・・・これって多分有名な本ですよね??でも実情は、読んだことがある人は多くないのかな???とちょっと疑問に思ったり。


 結構面白いキーワードがあったりして、にやけながら読みました。あんまりたくさん引用するのはアレですのでちょこっとだけね。

突如としてあなたの周りに助言したがる輩が現れ、(略)即席の専門家であふれてしまうのである。

 カヤック選びのところで。自分の乗っているシーカヤックが一番だと、自分が大金を投資したことを正当化するためにあーでもないこーでもないと言うそうです。ふふ。グサグサッと来ますね。私が乗ってるのが一番ですけどナニカ。

転覆からの回復手段を全面的に仲間に頼っている人も多いが、それは愚かな行為だ。

 セルフレスキューの一番目に「ロール」が出てきます。でも、『ロールだけに頼るのは誤りで、他のセルフレスキュー手段もできなくてはいけない』、ともあります。ロールが必要な状況=沈する状況=大変な状況なので、ロールができたところで大変な状況であることには変わりがないと。そんなときでも生きて帰るために、あらゆる選択肢を「ロール以外にも」用意しておく必要があるということです。でも、一般的な「セルフレスキュー」の練習ってロールが後回しになってないですかね?「バイブル」にはこういう風に書いてあるのに・・・。ってそれは「穿った読み方」になるのだろうか??

(略)海ではロールのできないツーリングカヤッカーのための、要はへたな連中のための手段として考えられている。しかし、たっぷり荷物を積載したカヤックでは非現実的な技術であり、転覆するような状況ではなおさら難しい。

 この○○レスキューは某テストの一科目にさえなっているのに、それは条件付でしか使えない、と、この「バイブル」では言っています。「難しい」からこそテストされるのでしょうか?それとも、この「バイブル」の内容がウソなのでしょうか?どちらにしても、これやると自分のカヤックを破壊しそうです。

この手法は、疲れのためや凄まじいコンディションのために打ちのめされ、もっと単純なロールに失敗した人が使えるものでは決してない。

 リエントリー&ロールの項。は~い、リエントリー&ロールができればパドルフロートの再乗艇はいらなくね?って言ってた私が来ましたよ~。これが確実にできるなら普通のロールもできるでしょ?っていうことで、ロール練習では有効、だそうです。確かにそうですな。肝心なのはそれでもだめだったときにどうするか?ってことですよね。

生き残る確率を高める特別な助言をしよう。常に安全を考えること。起こりうるすべての災難に対して備えるため、「もし何かあったら?」というシナリオを考えていること。すぐに使えるしっかりした装備を持ち、その使い方を心得ておくこと。さらに付け加えるとすると(略)

 ソロツーリングのところで。ソロツーリングをするのはリスクがあるが、誰も止められない。しかし、ソロで出るからには、どんな責任も自分に課せられるのだから、どんな災いにも対応できるようにしとかなきゃいけません。ベタ凪のときに、大型船が三艘並んだことがありました。ある小さな海峡を一艘が左から、一艘が右からやってきて、左からやってきた一艘を追い越しにかかったもう一艘がちょうど目の前で並んで三艘分の増幅された曳き波がやってきました。ベタ凪なのに巨大な波がやってくることだってあるんです。そんなとき沈したら、ロールに失敗して沈脱したら、小さな海峡で航路に流されたら、または波に岸へ打ち付けられてふじつぼで顔をひっかきまわされたら。イタタタタ・・・。「荒れたら出ない」は当然として凪でも思わぬ大波がやってくることもあるんですね~。そんなの予想できないかもしれないけど、そんなときでも生きて帰ってこないといけませんよね。

 また、ある日海上保安庁の海難事故事例を読んでたとき、転覆しているカヤックを見つけて通報して救助したっていう話を見つけました。ふと思ったんです。通報されたらそこでツーリングは終わりなんですよね。ロールしてささっと行ってしまわないと。沈はシーカヤッカー以外から見れば「転覆」なんですから、沈脱は「転覆・漂流」なわけで、いくら再乗艇する技術があったとしても、それを見た人は通報しちゃいますよね。ナンボでもロールして「なんだ、そんなもんか」と思わせないと、せっかくはるばるやってきてツーリングしてるのにヘリコプターやら巡視艇やらやってきて大騒ぎ。「なんでもないんです、一人でまた乗ることができたんです。暑いから泳いだだけなんです。」って言っても、船をそこに置いたままヘリで連れて行かれてしまうかも。そういう「シナリオ」はないかもしれないけど、あるかもしれませんよね。ないかなぁ。まぁなくても、ロールして安全をアピールできるくらいじゃないといけないと思ったりしました。そんなこと考える人はいないかな。沈して海中撮影とかよくやってましたけど、撮影終わって起きてみたら船に囲まれて心配そうに覗かれてた、なんてことがないように気をつけたいと思います。

 覗かれてたといえば、大学時代にセダンに5人のオトコが乗って高千穂峡に遊びに行きました。深夜について駐車場で車の中で寝てたのですが、さすがに5人が狭い車内で寝るとキツくて、私は外に出て、駐車場の車止めの上で寝てました。ふと目が覚めると地元の方が覗き込んでいて、「生きちょった」とつぶやきました。死んでると思われていたのでしょう・・・。周りに心配をかけないということも、大切ですね。

文明の喧騒から離れたところで料理をしているのに、15分の短縮がなんだというのだ!

 これを訳している人がかつてジェットボイルをたくさん売ってたのですから、ちょっぴり微笑みました。

 あまり書くと引用の範囲を超えてしまうのでこの辺にしときます。これでもやりすぎかも。

 例えばさまざまなセルフレスキュー方法について、たとえ非実用的であっても、その方法を紹介し、こういうときには使える、こういう状況では役に立たない、と書いてあります。殆ど役に立たないかもしれないけど、でも習得しておくのとしないのとでは、万が一のときに生存するかしないかの分かれ目になる・・・かもしれませんね。意味がないから載せないじゃなくて、意味がないかもしれないけど世間にはこんなのもある、っていう「引き出し」がたくさんあれば、その分生存率は高くなるかもしれません。

 なんかセルフレスキューのところばかり書いちゃいましたけど、その辺はおいといても、海況の話とか嵐の中で耐える(?)方法とか、私みたいなワンデイツーリングしかしないとあまり遭遇する機会がなさそうな話もあって、なかなか興味深いです。ラダーは便利だが壊れるものだとも書いてあるし、キャンプ中の防犯についてまで書いてある。多分あちこちを旅する間に得られたであろう知識が満載。氷山がひっくり返ることなんて、言われればそうかもしれないと思うけど、でもわからない。同じだけの航海をしてやっと得られる知識が使えないまでもとりあえず得られるというのは価値があるのではないでしょうかね。

 訳がねぇ、スカリングが「8の字」だったり、日本で一般的な横文字を「敢えて」日本語にしてあったりとちょっと気になるところが多々あるのですが、その辺は目をつぶって奥にある原文の真意を読み取れば別にいいでしょう。

 とりあえず、この本の内容は、本を買った人が読んでそれで終わると意味がなくて、練習して実践して内容を取捨選択して自分のモノにして初めて役に立つものです。ってどんなビジネス書なんかにも言えることでしょうけど。読んで「気づき」が得られるだけじゃだめですね。漂流しながら「なんかこの状況、本で読んだけど読んだだけだったよ~」でそのまま流されて終わりじゃ悲しすぎます。そんなこと言うわりにはおめぇは何もしてないやろって言われると「たしかに」としか答えられないので、こりゃツーリングばっかりしてる場合じゃないですね。練習しよっ

 「シーカヤッキング―長距離カヤック航海の世界」短距離カヤックの人もどうぞ。

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コメント

  1. 蘇化子 より:

    一般的な話で申し訳ないですが、どこかでイヴェント、またどこかで講習会、はたまた合宿研修ってやっているところが増えてきたようですが、よくみると沈脱しないための講習は非常に少なく、沈脱後の対処方法に重点がおかれているように感じます。まぁそれも大切じゃないとは言いませんが、それならもう沈脱して、レスキューにも失敗してあの世に行ってしまった後の対処方法も講習したら良いんじゃないかなと思うときがあります。って書いたらチョイ不謹慎ですかね。僕のシオンは誰々に差し上げます。貯金は少ないですが、皆さんでたこ焼きでも買って食べて下さい。事務所は掃除しておらず汚いですが、クラブハウスにでも使って下さい。等など。

  2. quickturn. より:

    もしかしたら、ボクが知らないだけで、沈脱後の練習ってスッゴク楽しいのかもしれませんね。
    パドルフロートを使うだけでも、右からの再乗艇、左からの再乗艇、右足から、左足から、前から、後ろから、仰向けで、うつ伏せで、といろいろな再乗艇バリエーションがあるのかもしれません。
    そう考えるとワクワクしますね!

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