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ダブルポンプへの道1:リーンを考える

 というわけで、リクエストを頂きましたので、僭越ながら超初級フリースタイルカヤック入門を書いてみたいと思います。

 とりあえず、静水で"Getting Vertical"の部分まで、つまり何とかバウを刺せるところまでは、何とかがんばってみたいと思います。

 実際の映像は、EJのDVDKen WhitingのDVDや、それよりもお近くのフリースタイラーの方に習った方が何兆倍も為になると思いますのであしからず。

 静水でバウを刺す方法っていうのは、大きくわけて二つ、フォワードストロークで勢いをつけて刺す方法とダブルポンプとあるわけです。どちらも共通したものがあるので途中で混ざったりしますが、とりあえずまずは目指せダブルポンプということで進めて行こうかと思います。

 ダブルポンプを構成する要素っていうのは、

  • 左右のリーン(船用語でいうとローリング)
  • 前後のリーン(船用語でいうとピッチング)
  • スイープストローク

 というのがあると思っています。実際にはもっとあるかもしれませんが、今のところ僕の中ではこれらの組み合わせでやってるつもりになっています。

 何でこれらが必要かっていうのはとりあえず置いといて、とりあえず左右のリーンからいってみましょう。


 カヤックを初めて間もない方に「リーン」を見せてやってもらうと、大体2パターンの動作をされます。いや、全員じゃないですけど。

 ひとつは「バタバタリーン」。艇を、←こんな感じで左右にバタバタ振ります。ようは、瞬間的には艇を傾けられるもののすぐ戻っちゃうパターン。持続するリーンができません。

 もうひとつは、こんな感じの「体重移動リーン」。ちいとは傾くのですが、ちょっとやりすぎるとすぐひっくり返ってしまいます。

 どうでしょう??ていうか、僕の見てきた数少ないサンプルの中でなので、んなこたぁないと反論のある方もいらっしゃることでしょうが、まぁそういうことにしておいてください。

 こうなってしまう理由を、艇の浮力バランスと体の重心で解いてみましょう。

 この図は、ふつうにカヤックに乗っている状態です。なぜ、カヤックは水に浮いて止まっていることができるのでしょうか??そんなの当たり前やん。そうなんですけど、どうして当たり前なのでしょうか。

 力関係を矢印で表してみました。黄色い下向きの矢印は、体(と艇も)にかかる重力(の合計)、赤い上向きの矢印は浮力です。

 浮力っていうのは、アルキメデスの原理っていうやつがありましたね。退けた水の体積に比例して重力とは反対側にかかる力です。つまり、船が沈んだ分だけ浮力が強くなるわけです。

 重い人が乗るといっぱい沈んで、でもあるところでとりあえず浮きます(浮かないこともありますが・・・)。それはたくさん沈むことで浮力が強くなり、重い人の重力とバランスが取れたところで沈むのが止まるためです(止まらないこともありますが・・・)。

 で、なんとかリーンしてみますと、こんな風に、傾けて沈めた側の浮力が強くなり、浮かせた側の浮力が弱くなるわけです。意味伝わりますか???赤い矢印を大きくした方が強い浮力がかかって、小さくした方が弱い浮力なわけです。そう思えたら僕の絵心をほめて下さい!?

 しかし、このままでは大きくなった側の浮力を抑えることができません。せっかく傾けて沈めたのに、強い浮力が働くから、そっちが浮いてきて、元に戻るわけです。

 だから、傾けてもすぐ戻り、逆に傾けてみてもすぐ戻り、あのバタバタリーンになってしまうのです。

 その一番大きい浮力が発生する部分の上に重心を持ってくるとピタッと釣り合いが取れるわけです。具体的には、上半身を傾けることなく、おへそをリーンしたい方向に水平移動させるようにします。その位置はリーン角度によって多少ずれるでしょうが、例えば右にリーンする時には、右のおケツに乗る感じと言いますね。リーンを維持できるスイートスポットを見つけて下さい。

 その時に上半身を傾けてしまうと、最初に述べたもう一方の「体重移動リーン」になってしまいます。体を傾けることで、体の重心はこの図でいうと左に移動します。すると、そちら側の浮力が負けて、艇が傾いて沈みます。傾いて沈むのですが、さきほどのアルキメデスの原理で浮力が強くなり、あるところで止まります。

 あれ?これでもなんかよさそうな気がしますよね??ちゃんと艇はリーンできてるし、重力と浮力のバランスも取れているような気がするし。

 でもこれはダメなんです。これでは、リーンをコントロールすることができないからです。リーンを浅くするためには体を起こさないといけないし、リーンを深くするためにはここからもっと体を傾けないといけません。リーンの深さを変えるために上半身がバッタバッタ動くなんて、瞬時に行えるわけがありません。そして、もっと体を傾けると、ご想像の通り、ひっくり返ります。もっと体を傾けると、重心が艇の外に来ます。そこには下から支えてくれる浮力がありませんので、重力に引っ張られるまま頭がドボンと沈んでしまうでしょう。

 もうひとつ理由があります。これ、実は、艇をリーンさせない方向へ動く動作なんです。今、図の中でこの人は左側に体を倒しています。腰から上が左に倒れ、図中左側の筋肉を収縮させている状態ですね。

 でも、より深いリーンをするためには、リーンするのと反対側の腰の筋肉を収縮させないといけないのです。つまり、上半身を倒すことによる体重移動は、実は艇にリーンさせないように動いているだけなのですね。

 何かに似ていませんか??ロールで頭を上げちゃダメっていうのに頭が先に起きてしまう。これは艇を起こすどころか倒す方向に運動しているんです、っていう話。それとまーったく同じことなんです。

 あとは、リーンのコントロールを練習しましょう。「コントロール」って言ったって何のことかわかりませんよね。意のままに操れるリーン、つまりリーン角度や設定した角度の維持が自由自在にできる様子が「リーンコントロール」です。

 浅いリーン、深いリーン、それぞれを維持しながら、あるいはリーンを切りかえながら。パドルなしで、あるいはブレイスを入れながら、フォワードストロークをしながら、後ろに漕ぎながら、など。いろいろな組み合わせでリーンをコントロールできるようにしましょう。

 

 というわけで、今僕の頭の中にあることをなんとか頑張って表してみました。例によってオマエは全く間違っているとご指摘頂くかもしれませんので、こんなのを読むよりはお近くのカヤックスクールで正しいことをしっかり教えて頂くことをオススメします。

 今回は左右のリーンをやってみました。次は前後方向に傾けてみましょう。これが正しくマスターできれば、ダブルポンプを練習しているはずなのにプラウ法(フォワードストロークからバウを沈めていくやつ)のコツまでがつかめると思います。多分。

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コメント

  1. 森永キャラメル より:

    ついに始まりましたね~ :cancer:(バンザイのつもり)
    まだ1回しか読んでいませんが(後ほど身に染みるまで読ましていただきますぞ(^_^)/~)、基本中の基本からの解説といい素晴らしい図解つきといい”やっぱり最高の指導者サマ”です。
    続きも楽しみにお待ちしていますが、暑い今日この頃無理をせずにお願いしますね :biccuri:

    報告
    21日、Sターンストロークの練習に行ってきました。
    最初は流れを利用して練習し、さらに静水でも練習をしてきました。
    何とか失速せずに漕げる様になりましたが、まだまだギグシャクとスムーズに行かない時がありますので、引き続き特訓です。
    さて、これから印刷をするべ

  2. 森永キャラメル より:

    質問で~す。
    2度3度読む中で質問したいことが2つほど出てきました、宜しければ教えてください。
    一つ目
    リーンの概念は、図解や説明でよ~く理解できました。
    特に、「おへそをリーンしたい方向に水平移動させるようにします」この説明は理にかなった説明ではないかと感心しています。
    そこでさらに進んで、q様がしておられます「リーンコントロール」がし易い膝の動かし方を教えて頂ければ嬉しいです。
    その二つ目
    セッティングの仕方ですが、一度上手い方の舟に乗せていただいた事があるのですが、ガンガンのセッティングをしておられたため、私が太っているのか数分間乗っているのがやっとでした。
    また、ある人に言わせたらある程度余裕があるほうが良いとの事、私としてはある程度余裕が無ければ長いこと乗っていられないのでこちらを選択していますが、体の動きに対する船の動きはきつい方が良いと思われますので、q様の考え方を教えてくだされば幸いです。

  3. quickturn より:

    まだ早いッス。これで実際にできるようになったら、いろいろとほめてください :smile:

    >質問
    やっぱり人によって意見は違うと思いますので、森永さんの考え方が作られていくうえでの参考のひとつになれば・・・。

    理想論で言えば、人魚の下半身が魚でケンタウルスの下半身が馬であるように、カヤッカーの下半身がカヤックになるようなフィッティングをするのがいいんだと思います。ナンノコッチャ

    それからするとキツキツフィッティングの方がよさそうな気がしますが、人間っていうものはたまには足を伸ばしたりしないときついですし、ちょっと姿勢を変えるだけですごく楽になったりしますよね。それができるとか、乗り降りが十分に楽だとか、意識を失った時に仲間に引っ張り出してもらえるとか(?)、その程度の余裕はあってもよさそうです。

  4. quickturn. より:

    きついのに違和感を感じやすいとかゆるいと気持ち悪いとか好みの問題もあるでしょうし、とりあえずゆるいと思ったらきつめにしてきついと思ったらゆるめる、っていう作業を面倒くさがらずやっていくと最適フィッティングが見つかるのではないかと思います。って、面倒くさがって大したことやってない僕が言っても説得力ありませんが・・・。

    その上手い方は最適なフィッティングを施してあって、その方にしてみれば、きっとぴったりフィットしているのでしょう。でも、全く同じ体型でない限り、他の人が乗るとキツイと感じたりゆるいと感じるものだと思います。だから方法だけパクらせて頂いて、自分の色に染めていくのがいいと思います。

    で、ぴたっとフィッティングが合うと、下半身がカヤックになります(僕はなってるとはまだ思いませんけど)。そうすると、「半カヤック人」が動かせるのは腰の部分だけなんです。下半身は固いポリエチレンでできてますから。ってことは、ひざはカヤックをしっかりホールドしたまま、ということになろうかと思います。

  5. quickturn. より:

    「ホールド」もまたいろいろで、カヤックのコクピットの形状やフィッティングの仕方や体型や好みによって、膝の内側で、膝を外に広げるように、足の裏を挟み込んだり、前に押したり、人によっていろいろあるでしょう。それらなんらかの方法でカヤックをホールドすることで前述のアソビをロックするわけですから、右にリーンしようが左にリーンしようが、多分関係なく「膝の動き」は「カヤックをホールドする」ということだけなんじゃないかなぁ?????????と思います。

  6. 森永キャラメル より:

    せっかちな者でスンマソ :face_endure:

    >右にリーンしようが左にリーンしようが、多分関係なく「膝の動き」は「カヤックをホールドする」ということだけなんじゃないかなぁ

    リーンをかける時に、結構「膝」を意識していたもので・・
    ・・・という事は、まだフィッティングが緩いのかも :face_pinch:

  7. quickturn. より:

    実際どれが正解かよく分かっていませんが、リーンで膝を使うと動作が遅れるからよくないとかいう話もあります。
    フィッティングがゆるいと、都度ホールドしなおす必要があると思いますので、膝も都度動かす必要がありそうですね。

    でも、意識する=動かすではないかもしれませんね。
    意識する=ホールドする
    ということだったら、それは正解かもしれません。

    でも、意識しなくてもフィットしているのが正しいフィッティングだったら、まだまだなのかもしれません。

    はい。よくわかってません・・・。

  8. 森永キャラメル より:

    忙しくて盆休みまで乗れませんが、再度フィッティングの確認をしてみます。それまではイメージトレーニングに励んどきます。 :beer:・・・飲みながら

    追伸
    ROCKETさんもガンバッテ(@^^)/~~~

  9. quickturn. より:

    あせることはありません。
    のんびり、ちょっとずついきましょう!
    じゃないと、すぐに追い越されてしまいます :face_pinch:

  10. ROCKET より:

    森永キャラメルさんご声援ありがとうございます。
    まずは金魚すくいをあせらず挑戦してみようと思います。
    カヤックて奥が深いですね~お互いがんばりましょ~

  11. 森永キャラメル より:

    >ROCKETさま
    リバーススィープロール、できたら聞かせてくださいね :ear:
    私の場合は、リバーススィープを途中で終わってパドルに頼ってしまうのか、シーカヤックで使うロングロール風になってしまい困っています。まぁ上がるのは上がるのでが・・・ :face_csweat:

  12. 、ス、ホヒ訷ホハタス醴サチケゥ`・ムゥ`・ウ・ヤゥ`

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    露ス釋鋗王ホ・ヨ・鬣ノ・ウ・ヤゥ`・ヨ・鬣ノ(Nシ家キ)シ、ーイヘィリ恁滄Tオ凜。
    ハタ、ホヨミ、ホ、ロ、ネ、ノ、ホ ・ヨ・鬣ノ・ウ・ヤゥ`ニキ、マ・ウ…

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